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特別償却と税額控除、どちらが有利か?
2012年06月04日
中小企業等投資促進税制や環境関連投資促進税制といった租税特別措置法の規定では、特別償却と税額控除の選択適用が認められているものがあります。どちらも税金が少なくなるという制度です。
それではどちらを選択した方が会社にとって有利となるのでしょうか。
それぞれの制度の特徴をご説明します。
【特別償却】
特別償却とは、取得価額の一定割合(30%など)だけ通常よりも多く減価償却費を計上することができる制度です。特別償却を行った年度は、償却額が多くなり所得が減るため、税金が少なくなるという仕組みです。しかし、それ以降の年度からは償却費を前倒しで計上した分、各年の償却額が少なくなり所得が増えるため、特別償却を行わなかった場合と比べると税金は多くなります。このように、特別償却は課税を将来に繰り延べる効果はありますが、トータルで損金算入(経費)できる金額は特別償却を行わなかった場合と変わりません。
【税額控除】
税額控除とは、取得価格の一定割合(7%、但し法人税額の20%を限度)を法人税額から直接控除できる制度です。特別償却と違い、償却費に影響させず税金額だけを減額することができます。また、法人税額の20%を超えたため控除できなかった部分については1年間繰り越すことができます。
税額控除は税金額を直接減らすことができるため、長期的に考えると特別償却よりも通常有利となりますが、適用しようとする会社の状況により有利不利はそれぞれです。
①黒字会社の場合
黒字会社で毎期安定的に利益を計上しておりキャッシュにも余裕がある場合は、税額控除を選択した方が有利となります。当面のキャッシュに余裕が無い場合には、特別償却を選択することで、適用初年度の資金繰りの助けとすることが可能です。
②赤字会社の場合
赤字のため法人税額が出ない場合に税額控除を選択しても効果はありません。そもそも払う法人税がないからです。一方、特別償却を行うと、償却費が多くなり赤字が拡大しますが、青色申告繰越欠損金として9年間繰り越すことができます。近い将来利益が出る見込みであれば、特別償却を選択して将来の所得と相殺することができます。
どちらを選択するかのポイントは、黒字会社かどうか、手元資金に余裕があるかないか、近い将来の利益計上が可能かどうかによって、判断する必要があります。
(長谷川賢哉)